静かに差し込む光の中で 〜看取り介護の現場から〜

介護現場の光景

看取りの瞬間は、特別な時間です。
平穏な空間の中、ご家族とともに過ごすその時間が、少しでも安らぎに満ちたものであるように。

看取り介護とは

看取り介護とは、人生の最後を近い方に伴い、その人らしい最後を迎えられるよう支えることをいいます。
病院ではなく、住み慣れた施設や家庭で最後を迎えることを選ぶ人も増えています。

介護職は、その人の人生の結びを見守る、責任とほこりのある仕事です。
それは「終わり」の時間ではなく、最後まで向き合い、その人らしい宝物のような時間だといえるでしょう。

看取りの現場でみるいのちの実感

家族が寄り添い、静かな時間を過ごすひとときには、言葉にならない温もりがあります。

介護職員は、それぞれの現場で「看取り」のケアに関わっています。

たとえば、個室で看取りを行っていた一事があります。
その方はすでに意思を伝えることも難しく、重度の介護を必要としていました。
ご家族は、面会に来られてもテレビもつけず、ただ座っているだけでした。

その様子を見た職員が、こう声をかけました。

「テレビ、つけていつもどおりにしてくださいね」

その一言に、ご家族は安心した表情を見せたといいます。
話せなくても声は聞こえているともいわれます。
ご家族の普段どおりの様子がそこにあるだけで、別れの時を平穏にすごせることもあるでしょう。

看取りの時間は、ご本人とご家族の心をつなぐ大切な時間です。
沈黙も言葉も、そのすべてに意味があります。
介護職員はその空気を大切にし、必要以上に中に入らず、そっと支える立場であろうとしています。

看取り介護のメリット・デメリット

【メリット】

  • 看取りであるため、急変時にも落ち着いて対応しやすい
  • 利用者が住み慣れた環境で平穏に最後を迎えられる
  • 家族や職員が深い絆を組む機会になる
  • 充実感ややりがいを感じられる
  • 介護職員自身の人間的成長につながる

【デメリット】

  • 精神的、肉体的な負担が大きい
  • 死に相対する経験が繰り返されることでストレスが積み重なる場合もある
  • 家族とのコミュニケーションに苦慮する場合もある

看取り後のケア・振り返り

  • 看取りに関わった職員のために、看護師やケアマネジャーと振り返りの会を開き、思いや対応を共有する
  • 職員の精神的負担を軽減するため、サポートや個別面談を実施
  • ご家族の許可があれば、お通夜に参加し、ご家族と一緒に故人を偲ぶ

また、現場の中は、一時的に雰囲気が沈んでしまうこともあります。
そのため、リーダーは、他の利用者やスタッフの気持ちにも注意を払い、日常を取り戻すための声かけや雰囲気作りを大切にしています。

看取り介護は、精神的にも肉体的にも大変なものですが、
利用者が平穏に旅立ち、ご家族から感謝の言葉をいただいたとき、
それは介護職員にとってのやりがいと自信になるのです。

📝 たけのこのひとこと

はじめて看取りの場に立ち会うとき、不安を感じるのは当然です。
でも、ひとりではありません。周りの職員と声をかけ合いながら、少しずつ経験を積んでいくことで、安心して向き合えるようになります。

看取りのあとで「ああしておけばよかった」と後悔するスタッフもいます。
だからこそ、1日1日のケアを大切に、丁寧に向き合ってほしいと願っています。

「いい最期だったね」と、ご家族にも、スタッフ自身にも思ってもらえるような時間を、これからも大切にしていきたいですね。


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