👋 こんにちは、新人介護士のしずくです
毎日、現場であたふたしながらも、ちょっとずつできることが増えてきました。
でも、今回のケースは本当に悩みました。
「どうして食べてくれないんだろう?」
スプーンを差し出しても、顔をそむけられてしまう——
利用者さんの気持ちに寄り添いたいのに、うまくいかない。
これは、そんな“モヤモヤ”の先で出会った、小さな「気づき」の物語です。
🍽️ 第1章:どうして、食べてくれないの?
「〇〇さん、どうぞ。ごはんの時間ですよ」
お盆を運び、利用者さんの前に座った私は、いつものように声をかけた。
優しく微笑みながらスプーンを差し出す。
けれど——
顔をそむけられてしまった。
「……」
無言のまま、ごはんを見つめようともしない利用者さん。
私はしばらくスプーンを持ったまま、固まってしまった。
(えっ……なんで? さっきまで元気そうだったのに……)
もう一度、名前を呼びながら声をかける。
でも返事はなく、スプーンにも目を向けてくれない。
「どうして……食べてくれないんだろう?」
理由がわからず、ただ焦るばかりだった。
🏠 第2章:家で調べて、ひらめいた
その日の夜。
帰宅した私は、食事の支度もそこそこに、ノートパソコンを開いた。
(「高齢者 食事拒否 原因」……っと)
検索して出てきたのは、いくつもの記事や医療サイト。
書かれていたのは——
- 認知症による拒否反応
- 気分や感情の変化
- 身体の不調(熱・痛みなど)
- 口腔内のトラブル(口内炎・義歯の痛み)
「なるほど……いろんな理由があるんだ」
その中で、ある一文に目が止まった。
「口内炎や入れ歯の不具合によって、痛みで食べられないケースもあります」
「……それかも?」
ふと思い出したのは、今日の利用者さんの仕草。
喋らず、食べ物に顔を向けず、でも怒っているわけでもない——
もしかしたら、口の中に“痛み”があったのかもしれない。
(明日、もう一度ちゃんと観察してみよう)
🌤️ 第3章:一口だけ、食べてくれた日
翌日。
私は、昨日と同じように利用者さんの前に座った。
でも今日は、いつもと少し違う自分だった。
「〇〇さん、今日は少しだけ、お口を見せてくれませんか?」
優しく声をかけながら、表情や口元をじっと観察する。
昨日は気づかなかったが、なんとなく、口を少し気にしているような仕草。
(やっぱり……痛いのかな?)
食べやすそうな柔らかいおかずを選び、少しだけスプーンにすくう。
「無理しなくて大丈夫です。でも……もし、いけそうなら、ほんのひとくちだけ」
祈るような気持ちでスプーンを差し出す。
……すると。
「……パクッ」
ほんの少しだけ、唇が動いて、スプーンの先が口に入った。
私は、思わず泣きそうになった。
(食べてくれた……!)
ほんのひとくち。でも、その一口に、どれだけの意味が詰まっていたか。
利用者さんが食べてくれたという事実が、胸にじんと沁みた。
(やっぱり……ちゃんと原因を確かめたい)
🩺 第4章:原因は——口の中にあった
その日の午後。
私は、いつも頼りにしている看護師さんに声をかけた。
「〇〇さん、昨日からお食事をあまりとられなくて……
もしかして、お口の中に何かあるのかなと思って」
看護師さんはすぐに対応してくれた。
「よし、ちょっと見せてもらおうね」
そして口腔内をライトで照らし、丁寧に観察したあと、こう言った。
「うん、小さな口内炎ができてるね。これは痛かったと思うよ」
そこに通りかかった管理栄養士さんも様子を見てくれて、
今度は入れ歯のフィット感を確認。
「……入れ歯も、かなり合ってないみたいですね。歯茎に当たってます」
私は、あの日の食事拒否の理由が、ようやく腑に落ちた気がした。
(痛かったんだ……それなのに、気づいてあげられなかったんだ)
でも、同時にこうも思った。
(気づこうとしたから、ここまでたどり着けたんだ)
その後、看護師さんと栄養士さんが中心になって、
お口のケアと食事の調整をしてくれることに。
チームでつなげた気づきが、ひとつの解決へ向かい始めていた。
📒 しずくの現場メモ
- 「食べない」には、理由がある
- 無理に勧めるのではなく、観察すること・問い直すことが大事
- 口内炎や入れ歯など口の中のトラブルが原因のこともある
- 専門職と連携することで、自分では見えなかったことが見えてくる
- 新人でも、「気づこうとする姿勢」がチームケアの力になる
🧾 まとめ|“食べない”の奥にあるもの
食事を拒否されると、つい「わがままかな?」「嫌いなものだった?」と考えてしまいがち。
でも、その奥にあるのは、痛みや不安、そして伝えられない“理由”かもしれません。
今回のように、小さな口内炎や合わない入れ歯が原因になることもあります。
そして、それに気づけるのは、介護職としてそばにいる“あなた”かもしれません。
大切なのは「観察すること」「気づこうとすること」。
新人でも、その一歩がケアの質を変える力になります。
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