介護現場で、「食事を食べてくれない」という悩みはとても多く聞かれます。
食べてもらえないと焦ってしまったり、無理に口に運んでしまった経験がある方もいるかもしれません。
でも、無理に食べさせる前に、私たちにできることがあるかもしれません。
この記事では、食事拒否の原因と、その対応について、現場でできる実践的な工夫を紹介します。
このページを読んでわかること
- 食事拒否の主な原因
- 介護現場でできる具体的な観察・対応の方法
- 無理に食べさせることのリスクと、実践できる工夫
食事拒否の主な原因
身体的な不調
- 口腔内のトラブル:口内炎、歯の痛み、義歯の不具合、乾燥など
- 嚥下機能の低下:むせる、飲み込みにくい、誤嚥が怖い
- 便秘や胃腸の不調:お腹の張り・不快感で食欲が落ちる
- 薬の副作用:味覚変化や食欲不振
心理的な要因
- 認知症による混乱:「食べる意味」がわからない・自分の食事と認識できない
- 気分の落ち込み:意欲低下・抑うつ傾向
- 環境ストレス:騒がしい・寒い・においなど
食事そのものの問題
- 味・温度・見た目:冷たい・薄味・彩りがない
- 食形態:硬すぎる・逆にミキサーが嫌など
現場でできる観察と対応
1. 口の中をチェックしてもらう
看護師や歯科衛生士に相談し、口腔内を確認してもらいましょう。痛み・不快感が「食べられない」原因になっていることがあります。
2. 食事の記録をつける
「何を・どれだけ・どんな様子で」食べたかを記録します。時間帯・声かけ・食事内容の違いからヒントが得られることもあります。
3. 家族に情報を聞く
「昔から好きだった食べ物」や「嫌いだったもの」をご家族から聞きましょう。食事への意欲を引き出すヒントになります。
4. 声かけや雰囲気を振り返る
職員側の声かけや空間の雰囲気も大きな影響を与えます。声のトーンや接し方も見直してみましょう。
5. チームで連携する
介護士一人で抱えず、看護師・栄養士・リーダーなどと一緒に原因を考えていくことが大切です。
無理に食べさせるリスク
- 誤嚥・窒息の危険
- 信頼関係の悪化:「無理やり食べさせられた」と感じることで拒否が強まる
- トラウマ記憶:嫌な体験として残る
- 職員の疲弊・焦り
無理に食べさせる前にできること
食べやすくする工夫
- 一口サイズ・温度調整・食形態の見直し
食べたくなる雰囲気づくり
- 声かけ・盛り付け・照明や環境の工夫
好きなものから試す
- 家族からの情報・本人が喜ぶ食事からスタート
市販・外食の活用
- 香りや刺激で食欲が戻ることも。必ず医療職と相談を。
多職種との連携
- 判断に迷う場合は、看護師・栄養士・主治医と相談を
まとめ|“食べさせる”から“食べたくなる”へ
すべて食べてもらうことがゴールではありません。
「今日はここまで食べられた」を大事にし、その経過を記録し、チームや家族と共有することが大切です。
また、長く一緒に暮らしていた家族がいれば情報収集のチャンスでもあります。
無理をせず、でも諦めず。
その人の“食べたい”を一緒に探すことが、介護職としてできる最大の支援です。
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