『はじめての一人夜勤。眠れないのは僕だった。』
※このエピソードは、入社4か月目の頃――まだ新人だった僕が、はじめて「一人夜勤」に挑戦したときの記録です。
16時25分。
タイムカードの前で、一度だけ深呼吸した。
心臓がドクンドクン鳴ってるのが、自分でも分かる。
これから17時間。16:30〜翌9:30。はじめての「一人夜勤」が始まる。
これまでの夜勤は、三谷さんが一緒だった。
先に寝る利用者さんがいたって、見守りが必要な人が多かったって、
「もし何かあっても、三谷さんがいる」って思えるだけで、ずいぶん違った。
でも今日は、僕ひとりだ。
ナースはオンコール。何かあれば電話できるけど、現場にいるのは僕だけ。
しかも、今夜は2つの現場(ユニット)を任されている。
遅出の先輩が21時半に退勤したら、そこからは本当にひとり。
車で来る早出が7時に現れるまで、長い夜を僕が守ることになる。
看護師もいない。対応はオンコール 何かあれば電話できるけど、現場にいるのは僕だけ。
夕食の配膳、服薬、口腔ケア。
「お願いしますね〜」「おいしかったよ」「いつもありがとう」
そんな言葉に、少し気持ちが落ち着いてくる。
トイレ介助、パッド交換、就寝誘導も、流れは頭に入ってる。
…でも、ちょっとしたことで心がザワつく。
「あの方、いつもより呼吸が浅い気がする」
「この方、足元ふらついてなかったかな?」
21:40
ナースコールが鳴る。
画面に表示されたのは、Tさんの部屋番号。
慌てて走ると、Tさんがベッドから身を乗り出していた。
「お手洗い…に行こうと思ってねぇ…」
転倒はなかった。ほっとしたのも束の間、
「もしこのまま落ちてたら…」と想像してゾッとした。
すぐにヒヤリハットとして記録を残す。
こういう“気づき”を次に活かせるようにするのも、一人夜勤の大事な仕事だ。
深夜2:15
「このへんが、一応“休憩時間”なんだけどな…」
記録の見直しを終えて、ふぅっと椅子に腰を下ろす。
仮眠を取ってもいいことになってる。タイマーも持ってきていた。
でも、心は全然休めてなかった。
ナースコールが鳴ったらすぐ動けるように、耳は常にアンテナ状態。
「“ひとり”って、こういうことか…」
仮眠をとる気にもなれなかったので、
スマホでケアラルの動画を見ながら、ぼーっと過ごした。
まじめに見たわけじゃないけど、不思議と安心できた気がする。
朝5:00
モゾモゾと起きだす人が増えてくる。
トイレ誘導、オムツ交換、整容介助――
「あ〜……朝のラッシュ、しんど…」
心の中でつぶやきながら、ひとりひとりに声をかける。
洗面所で車椅子が並ぶのを見て、思わず愚痴が漏れた。
「これというのも、政治家が介護の人員配置を甘く見てるからやろ…」
誰に届くわけでもないその言葉が、薄明かりの廊下に溶けていった。
朝7:00
玄関のオートロックが開く音がして、
早出の職員が「おはようございます〜」と入ってくる。
その瞬間、心の奥にひとつ灯りがともった気がした。
早出が来れば、僕は2ユニット対応から自分の現場だけに集中できる。
それだけで、ずいぶんと気持ちが楽になる。
「ああ、やっと“夜”が明ける」
そんな安堵で、肩の力がふっと抜けた。
9:20
日勤者が来たとき、思わず「お疲れさまです」と言った。
…いや、それ、言うのは向こうだった。
でも、何かが終わった安堵で、声が漏れた。
「おつかれさま、どうだった?」
声を聞いた瞬間、肩に乗っていた重たいリュックをおろしたような気がした。
「…大丈夫でした。でも、まったく眠れませんでした」
誰も見ていない夜の現場で、
自分だけの緊張と、ひとつの達成感を胸に。
僕はまた、少しだけ強くなれた気がする。
みなぎの夜勤デビューと同じように、夜勤中に注意したいこともまとめています。
👉 夜勤中に気をつけたい3つのポイント|せん妄・転倒・体調急変への対応
🌱みなぎの一言日記
「一人夜勤」って、ただの業務じゃなくて、“自分を信じる力”の訓練だった。
📓みなぎメモ
- 一人夜勤の基本:落ち着いて、優先順位を考えること
- 不安なときほど、記録を見返して判断
- 呼吸・表情・寝姿勢は「ちょっと変かも?」を見逃さない
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