止められなかった…それでも僕は前を見る
「今日は日勤だね。なんか、明るいだけでホッとするね。」
しずくが、少しだけ笑った。
僕も思わず笑ってしまう。
夜勤続きだったから、こうして昼間に動けるだけで、どこか気持ちが軽かった。
「今日ものんびり支援していこうね。」
そんな会話を交わしながら、僕たちはそれぞれの支援に入った。
午後、フロアは穏やかな空気に包まれていた。
お茶の時間を終え、利用者さんたちがそれぞれの場所でくつろいでいる。
そんなときだった。
ーーガタン。
振り返った僕の目に飛び込んできたのは、倒れ込む利用者さんの姿だった。
「○○さん!」
すぐに駆け寄ったが、もう立ち上がれない状態だった。
職員たちが一気に動き出す。
連絡、対応、記録。
現場の空気が、一瞬で変わった。
あっという間に、救急搬送の手配が整った。
ベテランの先輩たちは落ち着いて動いている。
僕としずくは、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
(僕は、何をしていたんだろう。)
(もっと早く気づいていれば…)
後悔の言葉ばかりが、頭をよぎった。
診断結果は、骨折だった。
思っていたよりも重い怪我に、僕は言葉を失った。
報告が終わったあと、主任さんから言われた。
「これは誰のせいでもない。○○さんの体調もあるし、転倒リスクも想定してた。大丈夫。」
そう言われても、自分を責める気持ちはなかなか消えなかった。
ふと、思った。
(三谷さんなら……どうしただろう。)
完璧に見えた三谷さんでも、
こんなとき、きっと悔しかったんじゃないか。
そう思ったら、少しだけ胸が軽くなった。
帰り際、しずくがぽつりとつぶやいた。
「止められなかったですね……でも、悔しいです。」
僕は、うなずいた。
「うん。」
たったそれだけの言葉。
でも、僕たちは、少しだけ同じ気持ちを共有できた気がした。
止められなかった。
でも、僕は前を見る。
悔しさを抱えて、少しずつでも進んでいこう。
🌱みなぎの一言日記
悔しい気持ちって、重たい。
でも、誰かと共有できたら、少しだけ軽くなる気がした。
📖みなぎメモ
- 転倒事故は、誰のせいでもない場合が多い
- 大切なのは、対応と、その後の見守り
- 悔しい気持ちは、次への糧にする
※転倒事故は、夜勤中にも起こることがあります。
夜勤中の対応についてまとめた記事もありますので、参考にしてみてください。
▶️ 夜勤中に気をつけたい3つのポイント|せん妄・転倒・体調急変への対応
※普段からリスク感覚を持つことが、転倒やアクシデント防止につながります。
新人さん向けにまとめた記事もありますので、あわせてどうぞ!
▶️ ヒヤリハットとアクシデントを防ぐ!|新人介護士さんが知っておきたいリスク感覚と現場の工夫
やる気みなぎ【奮闘日記】 関連リンク
- ⬅️ 【前話】新人の初夜勤、支えるために、僕もまた支えられていた。
- ➡️ 【次話】(準備中)
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